●グランド線増設によるエンジン出力特性の変化を検証する

20000801追記(測定結果)

【これは流行?】


 バッテリのマイナス端子とボディやエンジンブロックに配線を引くというのが最近話題になり、オーディーも少し気になっている。

配線を増設すると中低域のトルクがアップするというのだ。

配線を増設すると確かにその部分電気抵抗は少なくなるのだが、それとエンジンのトルクに何の関係が有るのか私には見当が付かない。

エンジンブロックには、セルモータ駆動用として100A程度でも耐えられる銅の配線が引かれている。その抵抗値はmΩオーダである。(そうじゃないと配線が焼けるからね)
また、エンジンブロック自体も導体の役割があり、アルミの抵抗率の大きさをもってしても、その断面積により、抵抗値は少ないと思われる。
ボディも同様である。

プラグの火花をこれ以上強力にしたところでトルクが劇的に変化するわけではないのだが、
グランドライン抵抗のmΩオーダの減少分は1次コイルの電流を劇的に向上させるものではないはず。

一方、交流発電機の要求トルクでは、グランドラインの抵抗が原因で消費電力が余計に数ワット増加したとしても、その変化は人間には分からないのでは無いだろうか?
(カーステレオ鳴らしたところで中低域のトルクが減少したという感じにはならないからね)

しかしながら体感するほどトルクがアップしたと報告する人もいらっしゃるので、私の知らないところで何かあるのかも知れない。

グランド線増設の効果について検証してみることにした。


【検証1:ノーマル状態の抵抗と電位差】


バッテリのマイナス端子と、エンジンブロック及びボディの抵抗を計測してみた。
また、エンジンがアイドリング状態での直流電圧および交流電圧も計測した。
測定器はDMMを使用した。
計測点 抵抗
(Ω)
DC Volt
(mV)
AC Volt
(mV)
ラジエタ付近ボディ ほぼ0 -8 5
エンジン・ヘッド ほぼ0 -10 5
エンジン・インジクション部 ほぼ0 -10 5

DC電圧がマイナスになっているのは、オルタネータからバッテリに充電電流が流れているためだろう。

その電位差は10ミリボルトであるが、この値は意外であった。
この電位差を抑え込むことによってパワーが上がるのだろうか?


加速度計測ツール開発

グランド線の増設効果がいくらなのか、定量的に把握したい。
エンジンのトルクを直接計測することは出来そうにないので、車体の加速度でもって間接的に計測することを考えた。

ちょうど良いことにここ加速度計のキットがあったので入手した。
このキットは+-2G迄計測でき、その結果をPCで取り込むことが可能である。

このキット、コントローラにPIC16F84を使用している。しかも空きI/Oポートが有るため、
コントローラのプログラムを書き換えれば、E/G回転数や車速も同時にパソコンに取り込む事が可能だ。
早速コントローラのニーモニックと睨めっこしてプログラムを作成した。

テキストエディタでニーモニック書いて、アセンブルして、ライタでコントローラ内のFlashROMにプログラム焼いて、実機に載せ、うまく動いてくれと祈りつつスイッチを入れ、やっぱりダメだったのねとデバグをする・・・
こんな作業の繰り返しが面白くてついつい夜更かしをしてしまった。

こんな小さな石でもプログラム次第で色んな事が出来てしまう。聞くところによると、ブロック崩しのようなビデオゲームをこの石 ( 正確には16F84ではなく、16C84というレジスタ数が少ないやつ )で作った人がいたとか。すごいとしか言いようがない。

脱線してしまったが、E/G回転数の計測方法を説明しよう。

E/G回転数の信号はECUより矩形波として出力されている。
この矩形波の1周期の時間をPIC16F84でカウントする。

高速で回転するE/G回転数信号の1周期の時間なんて計れるのかと思われるかも知れないが、
仮にE/Gを9000rpmでブン回したとしよう。1秒間で150回転だ。
そうすると、1周期は、6700μsになる。

対するマイクロコントローラはどうだろうか?
マイクロコントローラのクロックは4MHzであり、殆どの命令を1クロックで実行可能だ。
したがって、0.25μsで1命令実行出来る計算だ。
ここで、周期の長さをカウントするロジックを組んで、仮に10クロック必要になるとしよう。
そうすると、I/Oポートをサンプリングする時間間隔は2.5μsとなる。

E/Gが9000rpm時に出力される1パルスの時間で、マイクロコントローラがI/Oポートを調べる回数は実に 6700/2.5=2680回である。

計測した周期の逆数を取れば周波数(=回転数)を求められる。


この基板はRS-232CインタフェースでPCと接続し、計測データをPCに送信する。

このRS232Cのシリアル信号の生成もマイクロコントローラで行っている。
スタートビット、データビット(8bit)、ストップビット の順に送信するだけだ。


テスト時の様子である。


左側の基板は加速度計本体。シリアルケーブルはPCに接続している。
右側の石(PIC16F84)はテスト用に、色んな周波数のE/G回転パルスや、車速パルスを発生させるためのもの。

一方、PCのフロントエンドは余り凝った作りにしたくなかったのだが、結局こんな画面になってしまった。



計測システムとしては、まだ完成度が低く、計測中にロックアップしてしまったり、データの取りこぼしが発生したりと細かな調整が必要な状態だが、概ねうまく動作してくれる。


●グランド線増設

  とりあえず線をつないでみることとした。
まあ、普通の線じゃあ効果が薄そうだから、こんなのを用意した。
こんな太い線をイジったのは初めて

芯径6mmで外径は9mmぐらいで被服はゴム。
抵抗値は概ねゼロ。
(というかミリΩオーダで正確に計れる計測器がないのだ。DMMしか持っていない。)

この線だったらスタータのケーブルとしても使えそうである。
圧着端子を付けて、愛車にボルトオン!

長すぎるのだが、他の箇所にも使うのでご容赦を

ケーブルと言うよりパイピングと言った感じだろうか?

淡い期待を胸に、早速試乗した。中低速のトルクに変化は感じられるか?

うーん。余り変わっていないような気がする。
いっぺん外して乗ってみたがあまり変化がない!

人間の感覚なんて正確なようでそうでもないし、正確でなさそうで正確だったりするから、測定器で計測してちゃんと比較せねば。

(ここに接続すれば性能アップ間違いなし! ということを知っている方情報ください。)


加速特性計測ツール開発完了

しばらく仕事で手がつけられなかったのだが、ようやく開発が完了した。
詳細はココをご覧ください。

(『加速度計測ツール』の呼び名を『加速特性計測ツール』に変更)



【検証2:パワーアップグッズ適用による加速特性の変化】

今回、KOJIPEIさん主宰の愛鳥会の皆様のご協力を得てこの検証を行うことが出来ました。有り難うございました。
KOJIPEIさんホームページ
愛鳥会議事録
現場に向かうところ...

さて、パワーアップグッズの適用により本当に加速力=トルクがアップするのか...
以下のグッズについて効果を検証してみた。

(1) グランド線の追加
(2) 燃料添加剤『POWER TUNE』の使用
(3) 上記(1)+(2)

●グッズの説明

まずグランド線。身近にあるものを使用するのがオーディー流と言いましょうか、貧乏な私にはこれしか調達出来なかった。
2スケの2本掛けの線。 
一応、端子と銅線は圧着ではなく半田付け。
銅線の抵抗より黄銅で出来ている端子自体の抵抗の方が大きいかも知れない。

アース線はエンジンブロックとボディ(左下)に接続した。合計2本である。
エンジンルームがやけに砂っぽい





次にPOWER BOOSTERなる燃料添加剤。こいつを入れるとパワーアップするらしいのだが、能書きを見るともっと凄い事が書いてあって逆に胡散臭さを感じてしまう。
 『パワー炸裂、レーシングガソリンに迫る性能...』
シャシダイで205馬力が217馬力に上がったと書いてあり、最高出力が約12馬力上がったとのことである。私はこうした数字にすぐ惑わされてしまうタイプであり、思わず買ってしまった。しかも1ボトル3回分使用できて約400円。本当に馬力が上がるならばペイするかも知れない値段だ。

ボトルは計量漕付き

入れるところ。Photo by KOJIPEI氏

こいつのキャップを外す際、手に少しこぼしてしまい匂いを嗅いでみると何だか灯油っぽい。


(20000801追記)
●測定結果

以下要領にて実施した。

 テスト場所:埼玉県内某所

 条件:エアコンON(まずかったかな?暑かったもので...)

 
サンプル数:2 (=同条件で2回トライということです)

 
計測方法:3速で1000rpmからアクセルペダルをベタ踏みして計測スタート。やがてタコメータが
4500rpmぐらいとなった時点で計測ストップ。
(グラフでは1500rpm→4500rpm区間のデータのみ表示)

 
測定順序:ノーマル2トライ→アース2トライ→アース&添加剤2トライ→添加剤2トライ


*グラフ1:車速の伸びの違い(時間−速度)


線がギザギザになってしまった訳は、計測ソフトウエアが速度の値を整数に丸めていたため。
このあたりの詰めが甘かったのだが、改善していく所存である。


*グラフ2:回転数の伸びの違い(時間−回転数)


*グラフの見方
 グラフ1は時間の経過に従い速度が上昇する様子、グラフ2は回転数が上昇する様子である。
 マニュアルトランスミッションのため、回転数に定数(ギア比*タイヤの外径)を掛けると速度が割り出せるので、両グラフとも傾きは相似している。
 縦軸が速度、横軸が時間の経過で、傾きが垂直に近づくほど加速が良いということである。

*所見
サンプルでのベストは、添加剤1。反対にワーストはアース1である。両者の差は4500rpmに達するまで1秒以上の開きがある。
添加剤1と添加剤2を比較すると約1秒、アース1とアース2では約0.5秒の開きがあり、同条件でも計測値に結構バラツキがあり、ある程度の測定精度を確保するにはサンプル数をもっと増やしていく必要があるだろう。

*強引であるがランキング
少々強引ではあるが、測定1回目と2回目の4500rpmまでに達する時間の平均をランキングしてみた。
ランク 条件 4500rpmまでに達する平均時間(s)
1 添加剤 11.62
2 ノーマル 11.76
3 添加剤+アース 11.80
4 アース 12.09

燃料添加剤の効果は平均値でノーマルを上回っているため少しは効果があるのかも知れない。但し、体感上の変化は無い。

アースについてはノーマルを下回る結果となり、アースを追加することにより性能アップどころかダウンの傾向にある。

この数字については前記のように同条件でもバラツキがあるため余り当てにならない数字であるのだが、アースについては適用による明確な性能向上が確認出来なかったということは事実である。





 後日追記予定:何かあるかも?

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