●反射鏡格納機能付施錠開錠時光応答装置の製作
(夏休み工作スペシャル)

20010412追記

【感動のアンサーバック】

 以前、ココの実験オフ会に参加したとき、アンサーバック機構(ハザ連)を後付された方が居たのだが、その施錠開錠時のハザード点滅の動作をみて感動してしまった。

*アンサーバックとは、リモコンキーで自動車のドアを施錠開錠したときに、ハザードランプが1ないし2回ブリンクしてその状態を操作員に通知する仕組みのこと。

我が愛車はリモコンキーでの施錠開錠時にはビープ音でその状態を教えてくれるのだが、周囲騒音が大きい場合はビープ音は聞こえず、施錠されたのか開錠されたのかどうか分からない。


【付加価値を付けちゃえ!】

ただ光で施錠状態を通知するだけでなく、ドアミラーの収納を連動させれば便利ではないかと先のオフ会で話題となった。
話によると、ドアミラーの開閉機構は面倒くさいとのことで、この問題さえクリア出来れば何とかなるのではと思い、早速ドアミラー開閉スイッチを調べてみた。


【ドアミラー開閉スイッチの謎】

肘掛け部にあるドアミラー開閉スイッチを取り外して調べてみると、オーソドックスな正転/逆転回路組みの2極スイッチである。

任意の極性で出力させる機能の回路は、半導体を使用したものだとHブリッジ回路で行い、2極リレーだとタスキ掛けで結線する。
ここでは、半導体を使用してソリッドステートと洒落込むのだが、FETやTr単体のディスクリート部品を使わずにモータ制御用にHブリッジをIC化したものが市販されているのでそれを利用する予定である。


【ハードウエアの目論見】

ハードウェアは単純である。



マイコンは常時通電となる訳だが、消費電力は極小なので問題ないと思う。

リレーやHブリッジなど全ての開閉デバイスはマイコン制御とするため、マイコンのファームウェアがキモとなる。


【プロトタイプ完成・・・しかし】

この回路の動作概要は以下の通りである。

1.入力信号『OPEN』の供給で、ハザードを2回点滅させると同時に、ミラーを開くように電流を一定時間供給する。
2.反対に入力信号『CLOSE』の供給では、ハザードを1回点滅させると同時に、ミラーを閉じるように電流を一定時間供給する。
3.入力信号『ACC』が供給されると、上記1.2.の動作を出来ないようにし、の1.2.が動作中の場合は動作をキャンセルする。

入力信号『OPEN』、『CLOSE』はドアロックモータ駆動導線から引き込んでいる。

回路はブレッドボード上で実験機を製作し、正常動作確認後、蛇の目基板にプロト1号機を完成させた。



ハードウェアは安価に入手できるデバイスのみ使用した。
主な構成部品は、PIC16F84、3端子レギュレータ、HブリッジIC、リレーである。
中央のリレーは松下DSリレー(2極)で、9Vのものを使用。藤商電子で150円。
左上のICは東芝製TA8428Kでモータドライブ用のHブリッジである。藤商電子で300円。
HブリッジICが入手難であれば、パワーMOS-FETで組んでも良いし、2極リレーでもOK。

PICのプログラムで気を遣ったのは、チャタリング防止ロジックである。
チャタリングとは、リレーなどの接点が開閉した瞬間に流れる電流が断続的になる現象である。
こういった電流を何も対策しないままマイコンに入力させると誤動作してしまう。
チャタリングはハードウェアでも抑止出来るが、ソフト組みした方が部品点数が削減できることと、調整が楽であるため、ある一定期間の定常信号のみ反応するようにプログラミングした。

さて、机上でのテストが終了し、実車に搭載した。
そして開錠/施錠の操作をしてみると、一瞬動作するのだがリレーが必要以上にバタつき、そのうちPICがハングして入力信号を受け付けなくなると言う現象が発生した。

しばらくの間悩み、試行錯誤した結果、ドアロックのモータから発生するノイズ(あるいは逆起電力)がPICを攪乱させていることが判明した。

ノイズの影響を無くするにはどうしたら良いかと言うと、絶縁である。
絶縁と言えばフォトカプラが手っ取り早い。
試しに携帯電話の充電器からパクったフォトカプラ TLP620(東芝) を使いテストしてみたところ、今度は嘘のようにバッチリ動作してくれた。

これで後はうまく動くはずである...フォトカプラは3つ必要であるのだが手持ちのフォトカプラは1つだけ。早速藤商電子に注文FAXを送り、部品待ちのため製作は一時中断となった。
次回は基板を新たにプロト2号機を製作する。

【ついに完成】

で、入力をフォトカプラ渡しとして誘導ノイズの影響を少なくしたバージョンを製作した。
ご存じかと思うがフォトカプラとは、LEDとフォトトランジスタを1つのパッケージに封止した電子パーツで、LEDを発光させると、フォトトランジスタが導通状態となる。
入力と出力は光結合であるため、電気的なノイズを遮断できるという特長をもつ。
フォトカプラは1個30円(東芝TLP521-1)と、決して高価なものではない。

基板のサイズはW71*D47*H20mm

実車搭載後のテストはまずまずと言ったところだ。
ハザードの点滅はBEEP音と同一のタイミングとしている。白熱球の応答が遅れて認識しづらいかと心配であったが、意外に応答が良く見易い。

開鍵/施錠でミラー折り畳みが連動する機能については、少々モータの回りが遅かった。原因はHブリッジIC(TA8428K)での内部抵抗。ミラー折り畳み時にこのICが発熱するが、実使用で壊れる程度のものでもない。
このIC、ヒートプロテクター付きなので酷使しても動作が一時停止するだけである。また、過電流時には駆動電流をPWMとする機能を持つ。
このHブリッジICの代用として低ON抵抗MOS-FETで作った方が効率は良いとは思う。ただし、それほど安価なものではないので、リレーで代用した方が良いだろうか。

さて、この装置を付けた場合どんな動作になるかであるが、リモコンキー操作時の様子を動画撮影したので興味があるアルオーナの方はご覧ください。
動画(aback.rm)ダウンロード(RealPlayerG2形式 140KB)

(20010412追記)

結構反響があったのでこの装置、私が勤めている会社が作って売るとのことである。
しかし、担当者が多忙であるためプロジェクトは停滞気味となっている。
会社としてはこれで儲けようとは思っていないらしいが、売価をコストの3倍程度に設定するようである。

さて、製品であるが次の項目で改良されていて、完成度が上がったとのことである。

・待機電力をほぼ0とした
・ミラー格納モータのドライブ能力の向上させた

オーディーへのMail

ホーム